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深町貴子(ふかまち たかこ)

神奈川県川崎市生まれ。
東京農業大学短期大学部卒業
園芸家
有限会社タカ・グリーン・フィールズ 専務取締役
グリーンショップ「GREEN LIFE TAKA」オーナー
東京農業大学短期大学部生物生産技術学科非常勤講師(バイオセラピー論・園芸療法概論)

現在、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」講師のほか、NHK「あさイチ『グリーンスタイル』」コーナー講師としても活躍中。
http://www.taka-greenfields.com/site/

■今までのブログ一覧


「土と共に暮らすこと…」

2014.02.21 Fri

こんにちは。深町貴子です。

     

先日はすごい雪が降りましたね。

ベランダの植物も畑の野菜たちも重たい雪で折れてしまったものがありました。

大雪によって被害の出られた地域にお住まいの方、心よりお見舞い申し上げます。

都会の雪はアスファルトの上やコンクリートの上で端に寄せられ、

真っ黒に汚れた雪の山がいつまでも残っています。

郊外の畑では一面真っ白い雪原となり、

雪解けによって、ゆっくりと大地に水分を与えているようです。

早く暖かな春になってほしいですね。

ちょうど撮影で雪が積もっている畑の中を長靴で歩き、

ふと思ったのですが…

私は仕事のおかげで、土の上を歩く機会がありますが、

都会の人は、1日?いや数か月?

滅多に土を踏んでいないのではないかなと思いました。

皆さん、最近、地面を歩いていますか?



部屋から出てマンションの廊下を歩き、

道路を歩き、車や電車に乗って目的地へと向かい、

建物どうし行き来している生活では、地面の上を歩くことはありません。

それって、生物なのに不思議なことだな…と考えていました。



私たちは大地の上で暮らし、大地の上で育つ生き物を頂いて生きています。

けれど実際には、コンクリートの上で暮らし、

都会の人たちは柔らかい土の上を歩く機会はあまりないのですね。

人が土から離れてしまうことは、自然から離れてしまうことなのかもしれません。

植物も動物も、本来は土の上で暮らし、

土の栄養をもらい、土に戻る役割があるのです。

毎日の暮らしの中で、地面から離れてしまった生活を

せめて園芸という機会で触れる経験は、

自然の役割を理解するうえで、とても大切なことだと思います。



その一方で、今回のような自然災害や事故によって

私たちの食糧が確保できなくなることを回避するため、

土から全く離れた場所で、食料を生産できる技術も

生きるうえでは必要なことと考えます。

私は園芸家として、どちらの技術も考え方も

多くの人に知ってほしいと思います。

土の上で植物を栽培し、動物や植物と共存共栄することで、

自然を大切にすること。

そして自然の力を理解することによって、

私たちが生きるために必要な技術を向上させ、

私たちの力で自然を守ること。



なんで、また…

2月はこんな重たい話?なんて言わないで。

数十年ぶりと言われる大雪のせいです。



だってね…

大雪でベランダの植物の半分がダメになったり、

大雪で撮影が飛んだり、仕事は大混乱…

けれど、室内で育てていた野菜たちは

何事もなかったかのように、とても元気だったのです。

当たり前の話なのですが…



なんだか、いろいろ考えてしまってね。



ほらね。

家の中央にある水耕栽培で育てている野菜は育成ランプと水と肥料で

こんなにすくすくと育っていたのです。

野菜がじわじわと高騰する中でも、

タネさえあれば、食料は安定して生産できるのですよ。

大雪で屋外に遊びに行けなくても、室内でいろいろ楽しめてしまった訳です。

いつもはちょっとした実験のような感覚で、室内栽培を楽しんでいましたが、

美しい葉を見ながら、なるほど凄いな〜と感心してしまいました。



え?

今日はそういう話?

土づくりの話ではないの?



します。

しますよ!



積雪のあとの土は、雪解けの水が凍っては溶ける…を繰り返します。

それは、土の中に空洞をつくり、ふかふかな土への仕上げをしているところです。

土に適度な水分と空気が入ることによって、

土の中の生物たちが活動しやすくなるのです。

春に向けて、土の下はざわめいていることでしょう。



子供のころ、私は決まってある場所を覗くのが好きでした。



でも、そこを覗いているところが親に見つかると、

毎回怒られたものです。



どこ?



笑…

実は、芝生を剥がして、土の中を覗いていました。

高台にあった生家は、門から家の玄関まで曲がりくねった階段を上ります。

階段の両脇は石垣で、芝生の丘のような場所がありました。

石垣の縁まではみ出た芝生をグッと力いっぱい持ち上げると、

土の中の虫たちがワ〜っと慌てて逃げる様子が見られます。



実際には気持ちの悪い光景が多かったように記憶していますが….

もっとも嫌いで苦手なアリの行動を中心に

様々な昆虫たちが芝生の下で生活していました。

昆虫の死骸をバラバラにして巣に運びこむ姿や、

卵を運んでいたり、植物のタネを運んでいたり…

カビやキノコが生えていることもありました。

忙しなく動き続ける昆虫を見ているうちに、あることに気が付きました。



土は生きているのだと…。

植物や昆虫が多く生息する場所の土はフカフカしていました。

いつも彼らが土を運び、穴を掘り、耕し、

最後は自らが土の栄養となって戻るからです。

枯死した植物も昆虫の死骸も

最終的には微生物によって分解され、大切な土の栄養源となるのです。

だから森や林、原っぱの土は生きているのです。



土はより多くの生物と暮らすことで、豊かになり、

植物も昆虫も元気に育っているのです。

ん?

ここで疑問?プランターの土はどうなのでしょうか?

土は土でも、大地とつながってはいませんよね。



でも大丈夫。風が…空気が自然とつながっているのです。

何もしなくても、風で運び込まれた植物のタネによって

植物が育ち、昆虫を呼び、根の周りに微生物を呼びます。

つまり、私たちに待つ時間さえあれば、土は自然と作られるのです。



しかし畑で…プランター菜園で…、

数か月、数年と土が変化するのをあなたは待つことができますか?

それは難しいでしょう。

ならば、すでに分解された有機物を土に混ぜ、

お腹を空かせた土に栄養を与えてあげる必要があります。



だって、土は生き物だから…



寒風にさらされ、土が柔らかくなった今こそ、たっぷりの栄養をあげる時です。

自然に任せる部分と、人の助けによって、自然を維持する部分…

短気な人間ならでは行動ですね。

これから庭やプランターを畑や花壇にしようと考えているならば、

堆肥や土壌改良材を購入し、春の種まきや苗の植え付けのために

準備をしておきましょう。

春はすぐそこですよ。頑張りましょう。

深町貴子